Through it all
発表会が終わった。
終わった後の映像を見て第一印象として思うのは、楽しそうなんだけど、なんか軽いなあ、ということ。
音楽から離れている瞬間が多い。
たった3分のステージのためにこの2ヶ月のできることを注いだ。
思うこと。気持ちの管理が大切だった。
気持ちが荒れるとそれは自分の内臓にブーメランのように返ってくる。文字通りの意味で。
発表会までの最後の1週間が幕をあけるとともに、私の体は故障した。
2日間は長時間起きていられないくらいのみぞおちの激痛と戦った。
その後も本番まで、時々痛むお腹と、なんとなく思い切り動けない体と付き合った。
お医者さんに1週間お世話になった。
レントゲンを撮ったら、心臓と小腸に異常が見つかった。
血液検査では体内の炎症で異常値を出した。
炎症の値は「体内のどこかが荒れている状態のときに高くなる」とのこと。普通の人は特に高い人の場合でも0.2のところ、4。だいぶ荒れている状態で、何かが起きていることには変わりないとのことだったが、いまだに原因は不明だ。
体内が異常だったのは、心が異常だったのを我慢したからかもしれない、と思う。
この2ヶ月、とっても大変だった。気持ちがずっと暴風雨だった。
卑屈になったり、人を疑ったり、反骨的になったり、みじめな気持ちになったり。
常に「10秒くれたら泣ける」状態だった。
どうしてと常に問うていた。どうして踊る感覚が戻らないのだろう、どうして練習してもできるようにならないのだろう、どうして私だけ違うのだろう、どうして何が違うかすらわからないのだろう。どうして。
毎日のように祈った。
そして踊る感覚は、本番が終わってしばらくするまで、戻ってくることがなかった。
…どうして暴風雨だったんだろう。
気持ちをそこに100%持っていきすぎた。
”魂を売っている”状態がよくなかったかもしれない。
”自分の存在すべて”と、”出来具合”が、同じになる。
出来ない時、自分の存在自体が怪しくなる。
作品に愛着を持ち、その感情に依存したかもしれない。
気持ちを膨らませることを最初からしすぎた。
大切なテーマの曲だったし、大切にしたいその気持ちが自分にとって真実だった。
だがそれを早くに膨らませすぎて、逆にその大きなエネルギーが”出来ないこと”への悲しさに転化してしまったかもしれない。
人の出来や発言を気にしたのも良くなかったかもしれない。
「できてないのに人のこと言う?」「わかってないのにわかったように話すな」っていうイライラがずっとあった。
完璧な人などいないのに。もっと寛容に扱えたらよかった。
…そんな暴風雨だけど、その暴風雨にも対処のしようがあったかもしれない。
とにかく人に話せたらよかった。
よく振られた爆発しそうな炭酸飲料のペットボトルは、蓋を開けて炭酸を逃さないと危険だ。
破裂してしまう。
ではなぜ蓋を開けてなかったのか。
自分の状態に自信がなく、間違っているのは自分かもと思った。間違いたくなかった。
言う言葉が全部言い訳みたいになりそうだった。根拠のない”自信のなさ”だ。基本的に自分は間違っていると思っているから、自分が言う言葉は、自分には全部”弁明”に聞こえてしまう。
チームメンバーに言ったらチームの雰囲気がもっと悪くなってしまうと思った。
自分で解決しなくてはいけないと思った。自分で解決するのが自分の成長のためになると思った。
…そもそも、平常心を保つのがよかったかな。
感情を発生させないようにするのは難しいと思う。
さわれないものをコントロールする感じ。天気と同じで。時には暴風雨だってあるじゃない?天気をコントロールできるのはすごい祈りができる人だけだ。晴れの舞とか雨乞いとかできる人。
それに発生しない状態って不健康じゃない?
発生させないことを目指すのではなく、むやみに自分を刺激しないことかなと思う。
…他にもいろんな原因があったとは思う。
例えば2ヶ月の中で、ワクチンを2回接種した。これも一つの原因だったかもしれない。
1回目も2回目も1週間なんとなく思い切り踊ることができない状態が続いた。
例えば休みの日がなかった。これも一つの原因だったかもしれない。
土曜は午前から夜までずっと練習とリハーサル。
日曜はインプロが毎週あったし、夕方は振りの細かい練習をしたりもした。
休日は外のスタジオを借りて練習。
のんびりする日はなかった。ううん、でも多分、のんびりするっていうことができない気持ちの状況だったから、のんびりする時間すらも作れなかったんだと思う。
やっぱり今回は感情が大きなテーマだった。
発表会が終わって、1週間経って、毎日踊っていたらやっと少しずつ感覚が戻ってきた。
踊るってこういうことだよねと思うと、やっぱり発表会では踊れていなかったなと思う。
踊ることが好きだ。
たとえ踊ることに向いていない心臓だったとしても、私の心は踊ることを求めている。